「早朝5時半にマイクロバスが4台、とんでもない数の警官が...」大捕り物となった茨城県大洗町《インドネシア人29人摘発》当日の様子
日が昇って間もない朝5時半ごろ、太平洋に面した茨城県大洗町にポツンとある一軒のマンションは、禍々しい雰囲気に包まれていた。 【写真】大捕り物となった茨城県大洗町《インドネシア人29人摘発》当日の様子 建物を囲むように立っているのは、入国管理局の職員や、警視庁と書かれた赤いベスト姿の捜査員たち。その数は50人を超える。彼らの視線の先にあるのが、不法滞在(オーバーステイ)を続けるインドネシア人たちが住むマンションの部屋だ。 一人の捜査員を皮切りに、一斉にマンションに突入する。彼らが潜伏する部屋が並ぶフロアに立ち入ると、順番にドアを叩いていく。その姿をドアスコープ越しに見て観念したのか、部屋から一人、また一人と若いインドネシア人が出てくる。 「……」 その数は合わせて29人。彼らはうつむき加減のまま一言も発さず、捜査員に連れていかれる。そのまま彼らがマンションに戻る日は、二度とやってこなかったーー。 前編記事『《ルポ・茨城県大洗町》「今も1000人以上のインドネシア人が不法滞在している」…北関東随一の「移民の町」で、オーバーステイが蔓延する「知られざる理由」』から続く。
茨城県の不法就労者数は「全国ワースト1位」
北関東の太平洋岸にある人口1万5000人ほどの小さな町、茨城県大洗町。農業や漁業、水産加工などが盛んなこの町には、インドネシア人が多く暮らしている。外国籍の住民のおよそ半分を占め、彼らは地域産業の担い手として町に欠かせない存在だ。 しかし、大洗町ではいまだにオーバーステイ(不法滞在)の問題があとを絶たない。出入国在留管理庁によると、令和5年における茨城県の不法就労者は2748人にのぼり、全国ワースト1位。2024年7月には、大洗町のマンションでインドネシア人の不法滞在者が29人も摘発される事件が起きた。冒頭はその時の様子である。 「昨年10月には、摘発の舞台となったマンションの不動産会社の元社長が、出入国管理法違反の幇助容疑で東京地検に書類送検された。この男性は、インドネシア人29人を自身が管理するマンションに住まわせて、残留を手助けしたとされている。調べに対して『空室を増やさないためだった』などと容疑を認めている」(全国紙社会部記者) 飲食店が立ち並ぶ大洗漁港周辺から車で数分ほど、畑が点在する住宅街に、焦げ茶色のマンションがポツンと建っている。関係者によると、間取りは3LDKで家賃7万円ほど。現在も居住者の大半をインドネシア人が占めるという。 記者が訪れたこの日も、インドネシア人と思わしき人たちが頻繁に部屋を出入りしていた。マンションの一室に住む日本人男性は、摘発当日の様子をこう振り返る。 「あの日はとんでもない数の警官が来たよ。たぶん50人以上は来てたんじゃないかな。朝5時半ごろに目が覚めてベランダで一服しようとしたら、マンションを囲むように赤いベストを着た警官がうじゃうじゃ集まっててさ。駐車場にマイクロバスが4台停まってて、入管(入国管理局)の職員も遅れてやってきたからね。それで一軒ずつピンポンを押したり、扉を叩いたりもしてた。オーバーステイの連中も観念したのか、大人しく連れていかれてた」
マンション関係者が語る「移民ブローカーの存在」
摘発されたのは全部で6部屋。彼らは一部屋に5、6人ほどで共同生活を送っており、他の居住者からもよく思われていなかった。深夜に廊下で大声で話したり、マンションの共用部分でタバコを吸うことも珍しくなく、夜中にインドネシア人同士で殴り合いの喧嘩に発展し、警察が駆けつけたこともあったという。 「そういう環境の悪さからか、1階に入っていた学習塾も去年撤退したんだ。それ以外にも退去者が相次いでいたから(書類送検された)社長も焦っていたんだろう。『空き部屋にするんだったら誰でもいいから入れちゃって、家賃収入を取ったほうがいいよね』なんて話していた。だから俺も『それはまずいんじゃないの』と忠告しといたんだけどね、結局はあんな事件に発展しちゃった」(同前) 昨年10月に書類送検された元社長は、事件から半年が経った今、何を語るのか。男性の電話番号にかけると、「ちょうど今、あの事件の後処理でマンションにいるので来てください」との返事が戻ってきた。 ふたたび現場に向かうと、マンションの一室から年老いた男性が出てきた。取材したい旨を伝えたところ、「あの事件のあと、家具やらなんやら全部置いて50人近いインドネシア人が逃げちゃったから。その部屋の掃除やら改装に追われているんだ」とため息混じりに語りだした。 「当時は『K』と名乗るインドネシア人のブローカーが知人をボンボン入居させていたから、俺はオーバーステイだとは知らなかったんだ。みんな技能実習生だと思ってたから。Kが知人のインドネシア人を連れてくるときは、その子のビザも見せられたけど、俺はその辺の知識がなくて見たって何も分からなかったの。だから去年の10月にあんな記事が書かれて、こっちも風評被害で困ってるんだよ」 摘発の影響で日本人住民の退去者も相次ぎ、現在は42部屋のうち25部屋しか埋まっていない。1階の入口付近にある集合ポストの半分近くが緑色のガムテープでふさがれており、家賃収入も500万円ほど落ちたという。 この男性が「事件の元凶」にあげるブローカー「K」が不法滞在者を入居させるようになったのは、2022年ごろにさかのぼる。 「そのころからKはマンションに出入りするようになって、『俺が空室に人を入れてあげようか?』と持ちかけてきたんだ。Kは身長こそあまり高くないけど、手の甲にまで刺青が入っていて、ツーブロックでガタイのいい男だった。基本的にKが家賃を集めて、それを俺に渡すという流れなんだけど、日常的にトラブルも絶えなかった。 Kが『(住民から)家賃をもらってないから払えない』と言うから住民たちに聞いてみると、今度は『Kに払った』と言う。あの連中はいい加減だから、行き違いばかりで本当に迷惑してたよ。今はKのようなブローカー経由で外国人を入れることもやめたし、何も悪いことしてないよ」 その後、マンション関係者からブローカー「K」の電話番号を入手。しかし何度かけても応答することはなかった。
移民ブローカーの「知られざる内情」
取材によって明らかになった「移民ブローカー」の存在。これは町の主要産業の一つ、水産加工業者の証言からも見え隠れする。町内で長年にわたり水産加工会社を営む男性は、こう語る。 「コロナ禍以前までは、直接ウチに身分も名乗らないインドネシア人がきて『外人使いませんか?』なんて話を持ちかけてきた。当然怪しいからさ、『それちゃんとビザあるの? 不法滞在じゃないの?』と聞いたら、『うん、ビザないよ』とか開き直るもんだから断ったんだ」 いったい移民ブローカーとは何者なのか。前編記事で登場したNPO法人「茨城インドネシア協会」代表の坂本裕保さん(75歳)も、彼らの存在には頭を悩ませているという。 「要領のいいインドネシア人が、『大洗に来たら仕事があるよ』と母国から知人をどんどん呼び寄せて、紹介料を受け取っているらしいんです。私が思うに、ブローカーは日系人がやってて、6、7人じゃ効かないんじゃないかな。私の目の入らないところで彼らはコソコソ斡旋してるから、あまり実態も把握できていないのです」
李のひと言
茨城県は昨年?不法滞在外国人に住みにくい県にすると宣言してたな。実際に過積載のダンプに対してヘリでも監視したり、ヤードの監視を強化して、実際に抑止力となるようなことを実施。 この取り組みは是非アピールではなく継続していただきたい!